企業から内定をいただいたら、次に気になるのは雇用契約の締結、契約書の取り交わしです。目に見える形で表れるのが雇用契約書ですが、締結はいつなのが一般的と言えるでしょうか。内定後なのか試用期間の前後なのか、締結の注意点も含めて解説します。
雇用契約書の締結は入社前か初出勤日が一般的
雇用契約書とは、雇用主と労働者間での書面で労働条件を明確にし、お互いの合意に基づいた上で交わす契約書です。社会保険や給与計算の関係もあって試用期間がスタートする時点で雇用契約が成立していないといけませんので、契約締結は入社前に書類のやりとりを終えておくのが一般的です。
労働基準法によって文書にしなければならないものと決められているものでもあります。契約書は様々なトラブルがあったときに一番の解決の糸口になる書類で、裁判などいざというときに重要な役割を果たすものです。
一般的には、試用期間=業務を開始する、つまり労働をするということですから、労働に関する契約書は労働を始める前に成立させておく必要があります。
そうなると、雇用契約書の締結は入社前か初出勤日に交わすことが本来ならば正しいことになります。それでも雇用契約書を交わす時期は企業ごとにバラつきがあり、早いところは内定後に即日郵送、遅いところは入社当日といったところもあります。
もし、初出勤前日までに何も雇用契約書についての話が出ないようだと不安かもしれませんから、企業に問い合わせてみると良いでしょう。雇用契約書が出る、出ないの問題の他、記載内容についての確認も重要ですから、雇用契約書の確認にこだわることは大切なことになります。
契約書の取り交わしが遅いとトラブルになる?
労働契約自体は書面ではなく口頭でも可能ですが、口頭だと何かあったときに証拠となるものがなかったり、言った、言わないのトラブルになりかねないので契約書を作って取り交わすことが多いです。最初に説明した通り、契約書の取り交わしは勤務開始前に行いますが、試用期間開始後に契約書を取り交わすとなるとその間の給料などの労働条件で揉めた際、確実な証拠になるものが曖昧になってしまいかねません。
企業のなかには試用期間が数日経過した後や、試用期間の終了後というところもゼロではありませんが、その場合試用期間の労働条件が書面に残っていないので、何かあったときにトラブルになりかねない状態で働いていると言えます。
雇用契約書は、労働基準法に基づいて結ばなければならないものですから雇用契約書の締結日によって企業の姿勢がきちんとしているところか、そうでないところかがわかるとも言えます。
法律を意識していれば初出勤日までに締結している方向で動いているでしょうし、忙しいことを理由に試用期間中や後に締結すること常態化している企業もありえるということです。
労働基準法に基づいて同じことをしているといっても、ここから、企業のコンプライアンスのレベルや実行する人事課の質、会社の方針や信用度などがすでに見えているということでしょう。
本来なら、雇用契約書の説明を聞き、渡されたらじっくり読み返して理解をし、疑問があれば質問をし、納得した上で署名・捺印という手続きが締結の流れでしょうから、厳密にいうと、郵送をして返送させることも少々乱暴ですし、初出勤当日に即署名・捺印というのも丁寧ではないということになるでしょう。
ベストは、初出勤日以前に直接、雇用契約書の説明をし、数日間の猶予をおいた上で初出勤当日に締結をすることが良いタイミングではないでしょうか。
雇用契約書は「労働条件」に注意して確認する
前述の通り、企業から雇用契約書を渡されるタイミングによって言われるがまま、されるがままで雇用契約書の署名・捺印についてあまり深く考えないで行っている人もいるかもしれません。しかし、雇用契約書の内容は大変重要事項ですのでよく読まないで署名・捺印をしてしまうと、極端な話、ブラック企業に入ってしまうかもしれません。
「内定後に雇用契約書が郵送されて来たから、そのまま署名・捺印をして返送した。」「初出勤したら雇用契約書を渡されたから、数分でそのまま署名・捺印をした。」など、何かをいう間もなく、何となくの流れで署名・捺印をしてしまうのは、労働者側にも軽率さがあることは否めないでしょう。
内容をじっくり読むことはとても大事で、まして、転職をした方なら、内容をわかった上で慎重に入社を決めたいものです。
そこで、一番のキーポイントとなってくるのが労働基準法第2章労働契約第15条。この第15条で労働条件提示義務の最低ラインが示されています。この提示がなされているかの確認は、しっかり自分でしなければいけないのです。どのような内容かを見ていきます。「契約の期間」「仕事の内容」「始業・終業時刻」「休憩時間」「休日・休暇」「賃金」「解雇・退職」などが気を付けて確認する項目です。
これらの内容が書面提示されていなければ違法ということになりますから、チェックをする必要性がいかに大事であるかを理解しておくと良いでしょう。
試用期間中も契約内容が守られているか見極める
雇用契約書がない企業については、労働基準法において30万円以下の罰金という罰則規定もありますが、雇用契約書があったとしても、安心できない面もあります。法律で書面への記載が義務化がされている項目以外は、口頭説明で済ませても良いことになっていますから、口頭説明で何かあったとすれば、説明を聞いた日時と内容をメモしておくことをおすすめします。
雇用契約書を締結しても、もし内容と実際が違うことが多ければ納得できない転職となってしまいますから、そうなったときに、試用期間中に引き返す勇気が必要な場合もあるかもしれません。
いずれにしても、雇用契約書内容の実施を試用期間中に探ることによって、転職が成功したかどうかがわかることもあるでしょう。
試用期間中の残業、残業代についてはこちらの記事を参考にしてください。
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