やむを得ない状況で、電話で退職の意思を伝えることはできるのでしょうか。また出社せず退職をする場合に必要な手続きはどのようなことが必要になるのか、今回は、電話で退職を伝えたいと考える方のための方法、アドバイスを紹介します。
電話ではなく直接会って退職の意思を伝えるのが社会常識
一般的には上司や人事課に辞める意思を伝え、就業規則にのっとって退職の手続きを進めるというのが常識的、スタンダードな手順です。法律で決まっているわけではありませんが、これまでお世話になったことをふまえ、社内手続をスムーズに進めるためにも会社に行って話をして手続きを確認するほうが早いでしょう。
退職願など書類が必要になる場合もありますし、会社の備品の返却手続きもあります。他にも、挨拶や引継ぎをスムーズにするために書類を作ったり後任の担当者の方にやり方を伝えたりといった業務もあります。こういったことを考慮すると電話ではなく直接行くほうが本人にとってもより円満な退職にしていきやすいと言えるでしょう。
どうしても出社できない事情がある場合は電話で伝える
直接会社に行って上司に伝えるというのが一般的であるとは言っても例外的な状況、事情もあります。「体調不良」や「身内の問題」などが理由であれば会社も電話での退職を認めざるを得ない場合があります。
精神的な不調も含めて体調不良で出社することもままならない状況になってしまった場合、無理に動くとますます体調を崩す原因にもなります。その場合は、まず現状をしっかりと説明して退職の話をすれば会社も理解してくれるでしょう。
また、勤めている会社がブラック企業で会社に行くこと自体に心身に大きなストレスや不安を感じる場合も、体調不良として電話で退職を伝えるほうが良いでしょう。
次に身内の事情の場合、例えば両親の介護や看護などでずっと付き添いが必要となって出勤ができなくなってしまうことがありえます。
ずっとそばにいなければいけない分、出社することもできないくらいの状況になることもありえますので、このような事態の場合も、電話での退職連絡はやむを得ないことであると言えます。
電話で退職の意思を伝えるときの注意点
明確に退職の意思を伝える
やむを得ない事情があって出社が困難な場合、上司や人事担当者に電話をかけて、退職の意思を伝えましょう。このとき大切なことははっきりと退職の意思を伝えること。
電話での伝え方の例
曖昧な言い方になってしまうと無断欠勤扱いになってしまう可能性もゼロではありません。
退職理由としては基本的には「一身上の都合」ということで通せればそれで構いません。体調不良や身内の事情などの退職の理由を伝えることについて法律的な義務はありませんが、上司との関係性が良いなら伝えても特に問題にはならないでしょう。
電話で伝えることになったことをお詫びする
突然社員が退職すると、会社にとっては手続きや調整することがたくさんあります。担当していた仕事を誰に振り分けるか、新しい担当者の決定、想定されていたスケジュールの再調整、社内へのアナウンスなど、社員1人が突然抜けるということは、その分会社にも作業と経費がかさみます。その現実をあなた自身も理解しておきましょう。
お詫びの言い方の例
どんな理由であれ、会社側からすると電話で退職をするということはあなたを信頼して採用したことに対する失礼な態度に見えてしまう可能性があります。きちんと現状を説明し、お詫びをすることで少しでも理解を得るように話をすることが大切です。
電話する時間にも気を付ける
多忙な始業直後、休憩時間の前後、終業時間間際などは多忙なことがあり、話をしっかりと聞いてもらえない可能性があります。
「退職したい」という大切な内容をしっかり聞いてもらうためにも午前中なら11時から11時半、午後は14時から5時など、比較的作業も落ち着いている時間を選んで電話をするようにしましょう。
退職の際に会社に送付するもの
電話で退職の意思を伝えたあと、書類や返却物は郵送や後日持参しての手続きとなります。一般的には以下に紹介しているものを会社に送ったり、連絡して手続きをしてもらう(経費精算)ことになります。
書類の書き方、詳細な手続きの方法については会社の規定があるかもしれませんので、会社の人事担当者に手続きの方法を確認し、指定があればその方法に従って対応しましょう。
退職届
退職届の送付の際には、作成日付は電話で退職の意思を伝えた日にしておきましょう。
健康保険証
退職後、次の仕事先が決まらずに金銭的に国民保険料を払うことが難しい場合は、要件を満たせば一定期間、引き続き会社の保険に加入できる「任意継続被保険者制度」があります。申請をする際、保険証の番号などが必要になりますので、返却する前にコピーを取っておきましょう。
名刺
名刺は会社の支給品となりますので、すみやかに返却しましょう。
身分証明書・IDカード・カードキー
複数の企業が入るビルなどに入っている場合、キーカードは会社ではなくビル所有者のものでもありますので、忘れず返却しましょう。
会社の制服など備品
制服や文房具、社用携帯電話など貸与されている備品は返却する必要があります。
経費の精算
交通費などの経費で清算まだしていないものがあるならば会社に相談し、手続きを行いましょう。
退職の際に会社から送付してもらうもの
自分から会社に送るものと別に、会社から自分宛に送ってもらうものがあります。一般的には以下のような書類等を送ってもらうことになります。まとめて送ってもらえることが多いですが、それぞれの書類の担当者が異なる場合は別々に送られてくることもあります。
健康保険被保険者資格喪失証明書
退職することで、会社の健康保険から脱退したという証明書です。国民保健に加入する際に必要になります。
厚生年金基金加入証明書
勤務先の会社が厚生年金基金に加入していた場合に渡されます。年金の受け取りに関する大切な書類ですので、必ず確認しましょう。
源泉徴収票
退職後、次の仕事先での給与計算や自身での確定申告の手続きに必要になります。
退職証明書
家族や配偶者など、家族の健康保険上の扶養者となるときに必要になります。
年金手帳
年金手帳は通常は本人が所持しているはずのものですが、もし何らかの事情で会社に預けていた場合は返却してもらいましょう。
離職票
雇用保険の失業手当(基本手当)を請求するときに必要になります。こちらは退職してから10日前後に会社より渡されるものとなります。
会社から書類がもらえない場合は?
円満退職ではなかった場合はきちんと送ってもらえなかったり証明書を発行してもらえない場合もありえます。貰えない場合はひとまず引き続き会社に書類の発行を求めることとなりますが、あまり期待できない場合は役所に問い合わせ、相談を行うこととなります。問い合わせ先は書類の種類によって異なっています。
健康保険、厚生年金の証明書に関しては社会保険事務所に相談してみましょう。
源泉徴収票がもらえない場合は税務署に「源泉徴収票不交付の届出」を行うと、税務署から会社に連絡がなされ、交付手続きをするよう指導されます。
また、離職票がもらえない場合は会社所在地を管轄するハローワークに問い合わせを行うこととなります。
そして退職証明書ですが、これは従業員から請求があれば会社は発行しなければなりません。拒否したり、理由もなく遅れて発行するようなことがあれば企業にはペナルティが課されます。
退職届を郵送して辞める方法もある
電話をすること以外で辞める方法としては、退職届を郵送する方法があります。退職届は退職する意思を書面で相手方に伝えるもので、一方的に伝えても効力は発揮するものです。
ただし「退職願」を送ってしまうと受理するかどうかは相手次第になるので辞められない場合がありますので注意してください。退職届と退職願の違いについてはこちらの記事も参考にしてください。
とにかく会社に来て欲しいと言われても断れる?
電話で説明をしても「一度会社に来て話をしてほしい」と説得されてしまう場合もあります。また、書類を返すので来てほしいと言われることもあるかもしれません。
しかし、そもそも出社することが困難である状態であればそのことをはっきりと伝えることが必要です。ここで「顔を出すだけなら…」と出向くことを認めてしまうと、出社することを約束したことになってしまいます。
はっきりと、行きたくない、行けない旨を伝えてもあまりにも執拗に催促がくる場合は、労働基準監督署に相談しましょう。
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