試用期間を乗り越えれば、晴れて正式採用となります。そのためにコツコツ毎日頑張っていたのに、会社側から試用期間の延長を言われて、びっくりしてしまうことがあるかもしれません。そもそもなぜ試用期間を延長されたのか、また、言われて納得できなかった場合は、どのように対応すればいいでしょうか。延長理由のよくあるケースについて解説します。
企業は試用期間を自由に延長できるわけではない
試用期間とは、従業員を採用してから、本人の業務の適性を見て評価するために会社が設定している期間とされています。ただ、あくまで試用期間は延長や解雇を前提としたものではなく、本採用を前提にしたものなので、好きなように自由に延長したり、解雇ができるわけではありません。
試用期間内に仕事の適性が判断できない、評価できないと会社が判断した場合にのみ、一定の条件に基づいて延長ができることとなっています。
そして、試用期間を延長するにあたっては、以下のような定めがあれば会社は試用期間を延長できるとされています。
- 延長する場合があることについて、就業規則や雇用契約書に定めている
- 延長する理由に合理性がある
- 延長期間は当初の期間を含めおおむね1年以内であること
逆に言うと、この条件以外での試用期間の延長は認められません。文字の通り「試用期間」はお試し期間。だから何を言われても仕方がない…と考えがちですが、そこにはきちんとした労働契約である「解雇権留保付労働契約」が結ばれています。しっかり企業の一員として働いている立場なのです。
延長理由のよくある3つのケース
実際に試用期間の延長理由として挙げられるのはどのようなものでしょうか。ここでは良く使われる理由と、これらの理由を出された際の注意点も合わせてご紹介します。
1.期待した成果が出ておらずもう少し様子を見たい
色々な事情で仕事の能力が発揮できないように見えたり、期待した成果が出ていない場合、「仕事の適性が判断できない」とされる可能性があります。
会社は、採用した部署での成績や仕事ぶりなどで正式採用をするかを見極めます。ただ、人によっては期間内に求められた成果を出せないこともあります。そうした場合、企業としては「新しい職場に慣れず緊張して本体の能力が発揮されていないのではないか」「部署を変えたほうがもっと能力が出るのではないか」ということを考えます。
企業としても、時間と対価を払って面接をして「この人にならきっと業績に貢献してくれる」と見極めた上で採用していますので、期待を込めてもう少し様子を見たい、と考えている場合に試用期間の延長がなされる場合があります。
2.欠勤などで試用期間内の出勤日数が少ない
試用期間は通常の労働時間×勤務日数を想定して仕事ぶりを見るというものなので、これに満たないような状態になっていると、評価や判断が難しくなるため、判断に必要な期間として延長を申し出される可能性があるということです。
例えば、試用期間内に怪我や病気を患ってしまい3か月試用期間のうち実質1か月しか就業できなかった場合や、他に部署内で仕事がほとんどできず業務上の適性や能率の良し悪しの判断ができないなどの場合に延長の可能性があります。
3.試用期間中に部署異動があり改めて適性を判断したい
試用期間内に早期に適格かどうかが考慮されて、部署や仕事の内容が最初の契約と変わる必要があると判断された場合には、あらためて試用期間として再度、適性を判断することとなります。採用した部署での仕事ぶりが思わしくなく、他の部署での仕事の方が適正がありそうだという場合にありえるケースです。
延長理由に疑問があれば上司などに聞く
試用期間は、労働者と使用者が労働契約でお互い同意した上で成立します。試用期間の延長も、双方が合意して有効となるものです。そのため、試用期間の延長理由に疑問点、不明な点などがある場合は、期間の延長に了承せず、まずは「なぜ延長されるのか」ということを上司あるいは人事担当者に聞いてみましょう。
また、試用期間の日数、再延長については法律では定められていませんので、労働者と会社の間で同意があれば設けることができる仕組みです。ただ、試用期間という正式雇用ではない、不安定な立場でずっと労働に従事させるというのは、倫理的にも認められるものではありません。民法90条の「公序良俗」の観点からも、目安として1年以内が試用期間の上限と考えられています。
賃金も正社員より安価な設定にして、長期間の試用期間を設ける企業もあります。試用期間の延長を言われたら、まず就業規則などを確認し、あらかじめその条件が記載されているかをチェックして、同意するかどうかを考えましょう。
試用期間について契約書でチェックしておく項目は?
しかし、契約書には働く上で大切な要素が明記されています。本来は契約を締結する前に読むものですが、試用期間の延長を言われた時は、再度見直すチャンスでもあります。
今一度、しっかりと契約書を読み直してみましょう。そして試用期間の記載の有無を確認し、不明点があればこちらも上司や人事担当者に確認するようにしましょう。
働く期間が決まっている「有期雇用契約」になっていないか
「有期雇用契約」というのは、「あらかじめ働く期間が決まっている雇用契約」です。つまり、3か月や6か月など、契約期間が決まっている契約です。期間が終われば契約更新や期間の定めのない「無期雇用契約」に移行されない限りは、契約期間満了となって雇用契約は解消されてしまいます。パートや契約社員と同じ雇用形態ですので、契約書でどのような労働期間が定められているか、確認しておきましょう。
試用期間は、基本的に働く期間に期限がない「無期契約」の一部です。そのため、簡単に解雇や本採用拒否はできない契約とされていますので、自分がどういう契約をしているのか、読み直しておくことをおすすめします。
雇用契約書と給与や業務内容が同じか
契約書面に書いてあることが実際の現場で働くものと同じ条件であるか確認しましょう。求人広告は、応募者を集めるためにも良い条件ばかり並べておき、雇用契約を結ぶ際に、全く違う条件を盛り込んでくる企業もゼロではありません。
以上の内容からわかるとおり、試用期間の延長に納得できないのであれば担当者に相談するなどして、はっきりと質問・疑問を聞いてみましょう。そして納得の上、延長期間で業務をこなし、アピールをして本採用を目指しましょう。
延長を実際に申し渡されたときの対処法については、以下の記事を参考にしてください。
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