新しい仕事に就く時、会社によっては、一定の試用期間を終えないと正式には採用が決まらないという場合があります。
この「試用期間」の間のお仕事は、正式な採用後の働き方と何か違いがあるのでしょうか?今回は、試用期間中の残業時間や残業手当といったポイントについて、詳しく見ていきましょう。
試用期間でも残業は禁止されてはいない
試用期間とは、会社が従業員を長期的な労働力として雇い入れる際、まずは一定期間その働きぶりを確認しながら、正式に採用するかどうかを決めるための期間のことです。
会社によっては、試用期間の時給や月給は、本採用時の金額より低く設定されているケースもあります。これは法律的にも問題のないことですが、試用期間の長さや賃金の減額について、採用時に明確な説明がない場合や、当初約束した期間を超えて賃金を低く提示された場合は、一度上司へ尋ねた方がよいでしょう。
また、試用期間が1年以上に渡るなど、あまりに長く設定されている場合は、その理由についても、会社に確認することをオススメします。
この期間、残業をしてはいけない等の制限は特に法律で規定はありません。就業規則に記載されている可能性はありますが、基本的に残業は発生してもおかしくないと考えて良いでしょう。
残業代・時間外手当は固定給とは別で発生する
会社によっては、試用期間中であっても残業や休日出勤を求められる場合はあり、これは法律的にも問題はありません。
ただし、事業所は労働基準法により、労働者に対して残業代、つまり時間外割増や深夜割増、休日割増といった割増賃金を満額支払う義務があります。これは試用期間中の従業員であっても同じことです。
つまり、試用期間中であっても1日8時間の法定労働時間を超える仕事に対しては、会社は残業代を満額支給しなければならないことが、法律で決められているのです。
こうした割増賃金は、その最低ラインについても、労働基準法で定められています。8時間を超える時間外労働や、午後10時から翌日午前5時までの深夜業に対しては、時間給の125%以上。
また、法定休日に労働させた場合は、時間給の135%となります。また、割増条件が重複した労働に対しては、勿論、割増賃金も重複して発生します。
例えば、時間給1,000円という条件で、午後10時以降に1時間の時間外労働をおこなった場合、その1時間に対して発生する賃金は、1,000円×(時間給の100%+8時間を超える労働に対する割増25%+深夜業に対する割増25%)=1,500円となります。
「試用期間中は残業代なし」は会社の法律違反
一定時間分の残業代が初めから固定給として支払われている場合や、実際の労働時間数に関係なく賃金額が決定する裁量労働制の雇用契約を結んでいる場合は例外となりますが、基本的には試用期間中であっても、残業手当は全額支払われなければなりません。
ですから、内定先の会社が上記のような例外条件でもないのに「試用期間中は残業手当が付きません」という説明をしてきたら、それは違法な行為であると言えます。社会的な問題にもなっている「ブラック企業」である可能性も否定できません。
万が一、会社が「採用する代わりに残業代はなしで契約する」というような条件を出してきたとしても、その約束はそもそも労働基準法に反するため、無効となります。
面接や内定通知の際にそんな話をされた覚えがある…という人は、一度、各都道府県の労働局内に設置されている「総合労働相談コーナー」へ相談してみましょう。また、雇用契約書をあらためてきちんと読み直し、勤務時間、賃金の項目を確認することもおすすめします。
厚生労働省ホームページ
働く側にとって試用期間は、本採用を得るための、大事な「テスト期間」です。しかし同時に、その会社で働いていいかを見極めるため、皆さんが会社を「テストする期間」でもあるのです。お仕事へ応募する際には、法律に反するような要求をしてくるブラックな会社に入ってしまわないよう、十分注意してください。
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